ローザンヌ国際バレエコンクール2023ー山本康介さんの解説について語る
毎年恒例、ローザンヌ国際バレエコンクール決選の様子が7月8日にNHK Eテレで放送されました。
普段バレエは見ないけど、この放送だけは毎年見るという方もいらっしゃるくらい、日本ではお馴染みのコンクールです。
この放送については、ダンサーの演技はもちろん、解説を楽しみにしているという方もいらっしゃると思います。
ここ数年の解説者は、元バーミンガム・ロイヤル・バレエ団ファーストソリストの山本康介さん。
この山本さんの解説が、本当に素晴らしい。
声の大きさ、口調、話すスピードなどが適切で聞きやすいというのもありますが、それ以上に踊りから受ける印象を言語化する能力が際立っているのです。
以下、今回の放送の中から山本さんの解説で自分的に腑に落ちた例を3つご紹介します。
1.オーストラリアの女子出場者(タリスマン女性va.)
自分の印象:きれいだけど、ちょっと退屈
【解説】
「身体的要素はとても美しい。ただちょっと動きの中のアクセント、力強いところに欠けるというか瞬発力ですね…音のアクセントと一緒にもう少し決まった『型』があるときれいに見える」
退屈に感じた理由がわかりました。
2.アメリカの男子出場者(コッペリア フランツのva.)
自分の印象:肩がかたい?
【解説】
「胸が閉じているのと肩の姿勢のせいもあり、腕の動かし方が小さく見えてしまう。もう少し上半身をリラックスして大きく動けるようになれば踊りももっと大きく見えるようになる」
なるほど。もしかすると、緊張していたのかもしれませんね。
3.韓国の女子出場者(コッペリア スワニルダのva.)
自分の印象:テクニックすごいけど、何かくどい
【解説】
「(個人的な意見、と前置きしたうえで)クラシックバレエと言う表現においては見せ方が強すぎる。…少しこれ見よがしの印象が強い。」
なるほど。テクニックに余裕があるがゆえに、クラシックバレエとしての表現の域をちょっと超えた感じでしたね。ただ、観客や審査員からの評価は良かったようなので、「コンクールの演技」としては許容範囲なのかもしれません。
山本さんは、コンクールの演技だけでなく、将来的に舞台で全幕物のバレエを踊るために必要な要素が備わっているかどうかを重視した解説をされているように感じます。
以上、3例だけ挙げましたが、本当は全員分の「自分のぼんやりした印象」と言語化された解説を紹介したいくらいです。
さて、今回の順位は、予想と全く異なるものでした。
山本さんにとっても意外だったようですが、それこそが審査員を複数のメンバーで構成する理由だと説明されていました。
「複数の人間が集まって試行錯誤して審査する。違う審査員になれば、また違う結果になる。本来、バレエは比べるべきものではないから。」と。
そう、バレエはスポーツではないので、本来順位を競うものではありませんからね。
放送が終わったばかりですが、また来年の放送も楽しみにしています。